りょうちん in DY CUBE
先日シンガーソングライター「キタムラリョウ」のライブを見に行ってきた。

24歳の頃「アキドリ」というユニットを作って、路上やライブハウスで歌い始めた最初期、友人が紹介してくれたライブバーで彼は歌っていた。年下とは思えないほど卓越したギターテクニック、渋い歌声と骨太な音楽性、ウィットとユーモアに富み、かつものすごくセンチメンタルな言葉選びに、心のど真ん中を撃ち抜かれた。年下とは思えないほどのふてぶてしい態度には当初ムッとしたが、彼なりの愛情・親しみの表現だと気づいてすぐに仲良くなった。
それからというもの一緒にツアーをしたり、一緒にライブを作ったり、一緒にCDを作ったり、あちこちで数えきれないほど一緒に歌ったし、それ以上によく話して笑った。僕は彼のことが友達として心から大好きだし、音楽家としてもリスペクトしているのだけど、その分どうにも合わないところや直してほしいところもあったりして、幾度となく衝突した。めっちゃケンカしてきた。
今回、たぶん7年ぶりくらいに再会となった。きっかけは、今年の自分の誕生日に彼(以下、りょうちん)がおめでとうLINEをくれたこと。ここ数年すっかり疎遠になっていたのもあり「話したいことが山ほどあるから、また東京で飲もう!」と言ってくれて素直に嬉しかった。そんな折、りょうちんのSNSで東京ライブのお知らせが載っていた。場所は下北沢DY CUBE。これまた旧知の友達「タイキ」が働いている新しめのハコ。タイキにも長らく会ってないし、新しいハコにも行けてない。これは良いチャンスではないだろうか…さらに共演者を見ると…「JiHyang(ジヒャン)」さんがいる!実はついその数日前に、後輩SSW「ミノノサトエ」からJiHyangさんを紹介してもらったばかり。YouTubeはチェックしたがライブも見たいなと思っていたところだった。
この日しかない、と思った。知っている人もいるかもしれないけれど、自分はライブハウスがあまり得意ではない。好きな人のライブを見るのは好きなのだけど、ライブハウスの空間自体に、ちょっと居場所のなさを感じるのである。誰が悪いとかどこが悪いとかはなく、好みの問題である。(散々歌って散々人を呼んでおいてそりゃねえだろうと思われるかもしれないが、歌う側と聴く側は全く違うので許しておくれ。歌いに行くのは好きです) なので、見たいライブはそれなりにあるんだけど、ライブハウスに行くだけでも自分にとっては大仕事なのである。これだけの分厚いきっかけがあったおかげで、行動に踏み切れた。
そんなわけで、DY CUBEに足を運ぶことができた。出演者は最初から最後まで全組見たが、さすがタイキとしか言いようのないブッキング。どのアーティストもギラッと光る武器をそれぞれに磨いていて見応え満点。あとで少しタイキと話せたが、彼がひと組ひと組に対しピュアな目で熱意を語るのを聞いて、ああ、本当に最高のブッカーだなって思った。
JiHyangさんのライブは「見てよかったなぁ…」と心から思った。楽曲や歌声が素敵なのは知っていたけれど、音源では伝わりきらない尋常ではない温もりと優しさがそこにはあって、どんな最悪な出来事にも「まぁ、いいじゃないか、おつかれさま」と寄り添ってくれる、深呼吸させてくれるような演奏だった。一度のライブで彼女の人間性のファンにまでなってしまいそうだった。
かくしてりょうちんが最後に登場。7年ぶりの彼のライブは、全部知らない曲だった。りょうちんは昔から多作で、その時どきのキラーチューンも数ヶ月経てば全然歌わなくなるみたいなタイプだ。「お客さんが曲覚えた頃に歌わなくなるやん」と、そのスタイルが不満だった頃もあったが、この度すっかり新しくなったセットリストを体験して、彼がいかに「曲ではなく、キタムラリョウを表現することにこだわっているか」を感じられた気がする。曲が変わってもりょうちんの魅力は少しも変わってないや。「変わってないってのはすごいんだよ、変わってないってことは変わり続けてるってことだから」というどっかのラーメン屋さんの言葉を思い出す。りょうちんは見た目にそぐわず(笑)非常に繊細な男だ。その時の景色や感情や付き合う友人や家族との会話を、豊かすぎる感受性で捉え、言葉にして歌にして、リアルタイムでライブに反映させる。それに合わない曲は、人気の曲でもリストから外してしまう。だからこそ常に新しくて、常に純度100%のキタムラリョウなのだろう。
紆余曲折あっても結局は大好きである。人間、正反対の人との関係の方が長続きする、とか言ったりする。またいろいろもらっちゃったね、ありがとうりょうちん。



