まだ言ってない

「お父さんがICUに入院した。重症で命の危険もある」

ちょうど一週間前母から電話を受け、
2時間後の飛行機を予約し仕事道具とパジャマだけバッグに詰めて、家を飛び出し地元山口へ。

タチの悪いインフルエンザだろうとたかを括っていた関節の激痛、検査結果は敗血症。
ICUだの人工呼吸器だのと医療ドラマでしか聞いたことのない言葉が家族のLINEに飛び交う。

入院したその日の夜がMAX危険な状態だったようで、医療チームのフル回転のおかげでそこは脱した。
担当医曰く半日遅れたら助からなかっただろうとのことである。ナイス両親ナイス医療チーム皆ほんとナイスっす!

とはいえ
「危険な状態に変わりない、家族は皆会っておいたほうがいい」
とのこと。

群馬にいる姉も実にスピーディーに小さい子供を連れて帰ってきた。(群馬から山口は移動が非常に面倒なのである)
皆で毎日面会に行き、多くの管と機械に繋がれて眠る父の手を握り、頬を撫で、励ます。
血液検査の結果を受け取る。
母姉とも(ちなみに父も)医療従事者なので数値の意味を理解しており空気がひりつく。

そんな中ただ一人ど素人の自分は、一緒に数値を見てふーむふむなるほどなと如何にそれっぽく分かったふりするかに全力を注ぐ。

「おめーらバスケかぶれの常識はオレには通用しねえ!!

 シロートだからよ!!」

自分の中の桜木花道が、呑気とポジティブがオレの役目だと叫んでいる。

自分は40、父は72。
この歳まで親兄弟が命の危険に遭うことはほとんどなく、家族がいなくなることなど想像もできなかったのは、幸運という他ない。
父母姉皆頑丈で、大きな病気も怪我もほぼない。
今回初めて父がいなくなるということをリアルに想像して、昔から連れて行ってくれた場所や一緒に歩いた道を通る度に胸が締め付けられる。
姉と自分が家を出るまでは若干関白気味で厳しく気分屋な父だったが、愛されてないと思ったことはまったくないし、僕がするどんな無茶も無謀も、苦言を言いつつ結局は必ず応援してくれた。
仕事場では多くのスタッフに信頼され愛されていることを大人になってから実感し、その人柄と仕事への姿勢もすごく誇らしかった。
本心は僕にも医療の道へ進んでほしかったらしいが一言もそれを言わず、高三の文化祭でバンドに明け暮れていた僕のステージを、誰よりも綺麗に撮影し見返し、何度も褒めてくれたのを覚えている。
いやはや、あなたにはまいりました。

父が大好きだし、尊敬している。世界一の父だ。

生きているうちに言えばいいやと思っていた言葉を、まだ言ってない。

※このブログは1月21日のFacebookへのはるどりの投稿を、転載・再編したものです

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